ビールの縁側

RIO BREWING & CO.(千葉県)のはなし

ベルギーと日本、そして世界中へ。
ビールでつなぐ人の円が、広がりのある未来を見せてくれる

「RIO BREWING&CO.(リオ・ブルーイング・コー)」は、ベルギービール名誉騎士である菅原亮平さんが2015年にベルギー現地法人にて設立したブランド。特定の醸造所を持たないファントムブルワリーを経て、2018年に東京・五反田に自社醸造所を構え、2021年に千葉県柏市に拡大移転しました。運営するEVER BREW株式会社は、「デリリウムカフェ」「ベル・オーブ」「ブラッスリー セント・ベルナルデュス」「ブラッスリーMUH」「ウルビアマン」「ブッチャー・リパブリック」等、ベルギービールやクラフトビールを主軸とした飲食店を多数展開しています。RIO BREWING.COの代表、菅原亮平さんにお話を聞きました。

味も缶も、ビールは表現したいものを自由に描けるキャンバス

 

2021年7月、リオ・ブルーイングとして初めての缶商品をリリースしました。ビールは千葉県柏市の醸造所で造ったもの。五反田にあった東京醸造所から、2021年3月に柏の葉に移転したんです。新ブルワリーのフラッグシップとして出したのが、「RISON(ライゾン)」と「TOKYO BAYCOAST IPA(トーキョー ベイコースト IPA)」。

 

RISONは、「RIO(リオ)」の名を冠したベルギーの伝統的なセゾンスタイルのビールです。ブルワリー名にもなっている「RIO」は私のニックネーム。海外の醸造家に覚えてもらいたくて、発音しやすいニックネームを自分で名乗りだしました(笑)。

TOKYO BAYCOAST IPAは、ホップが香りながらも普段の食事に合わせやすいようにドリンカビリティを重視したIPAです。缶のジャケットは東京の暮らしを支える豊かな東京湾をイメージしています。ビジュアルはもともとうちで働いていたアルバイトのコレガス(※1)とデザインしたもの。ビールって、表現したいものを自由に描けるキャンバスだと思うんです。缶という小さなキャンバスだって使い方は自由。さまざまなアーティストやデザイナーとコラボして、ストーリーを表現できる場として活用していきたいと思っています。

これも、私が理念として大切にしている「ビールや食でつなぐ人の円」の延長上にあることです。私が歩んできた人生は、一期一会からさらに深く踏み込んで、ご縁が次々とつながって円のように広がってきました。そのおかげで、世界中の醸造家や飲食関係者、志を共有する仲間とつながることができて今の自分があるんです。

軸にあるのは、何よりも「ベルギービールが好き」というシンプルな気持ち。

20歳の頃に出合った1本のベルギービール「シメイ・ブルー」でした。フルーツやスパイスが入っていたり、自然発酵など独自製法で造られていたり、ベルギービールの世界は自由で多彩。デザインにも個性があふれています。ベルギービールに魅了されたのをきっかけに、「あの醸造家のビールを広めたい」「このビールに込められた想いを伝えたい」という思いで、買い付けのためにベルギー中の醸造所を訪ね回りました。現地で醸造所を紹介してもらって、朝から晩まで一緒にビールを飲んで、地道に直接交渉を続けて。

 

表現したいもののために酵母を取り寄せ、発酵タンクも設計しました。

 

日本とベルギーにルーツを持つリオ・ブルーイングが手掛けるのは、ベルギーの醸造所で培ってきた醸造技術をベースにしながら、日本の要素が感じられるジャパンスタイルのビールです。醸造や流通システムが進歩して、さまざまなスタイルのビールが飲めるようになった今でも、日本でクラシカルなベルギースタイルのセゾンを飲める機会は本当に少ないんですよね。

でも、うちならそれを高いレベルで仕上げることができます。

最大の違いは原材料、中でもベルギービール醸造において肝となるビール酵母を自社で直接輸入できることです。通常は中間業者を通して購入するので、どうしても選択肢が限られてしまいます。でもうちは表現したいビールを造るための材料をベルギーから取り寄せることができる。さらに、千葉のブルワリーでは酵母が本来のパフォーマンスを発揮できるように発酵タンクの設計をしています。ベルギーの醸造家に教わったことを活かして。その違いが、ビールの味わいとなって反映されているんです。

もともと新ブルワリーの構想は、2018年に五反田の醸造所をオープンした当時からありました。ただし東京と千葉の2拠点の予定で。ところが、新型コロナパンデミックで大きな方向転換を迫られました。港区など都心を中心に30店舗あまりの飲食店を抱えていたので、家賃だけでも毎月数千万円を軽く超える固定費が消えていきます。このままでは事業の継続そのものが難しくなるし、アルバイトを含めて300人近くもいる大事なコレガス(※1)の雇用、しいては彼らの生活も守れません。そこで東京の醸造所は手放して、千葉に醸造を集中する拡張移転という形に大きく舵を切りました。経営者として、とにかく会社を存続させること、生き残ることを最優先にしました。

緑豊かな田園都市の一角にある柏の葉ブルワリーは、開放感たっぷりのテラスでBBQができて、ファミリーで楽しめるオープンなブルワリーです。大学の専門が建築だったので、出店計画ではその場所でお客様が食事や買い物を楽しんでいる様子を思い浮かべるんですが、ここではビールを思いっきり楽しむイメージができたんですよね。

私たちのチームがビール造りを続けて、世界に届けていくためには、世の中の変化に応じて変わっていく必要もあります。留まっていても航路は拓けません。

やりたいことはたくさんありますが、世界を自由に行き来できるようになったら、海外の醸造家を日本に呼んでコラボ醸造を積極的にしていきたいですね。まずは「ヒューガルデン・ホワイト」や「セリス・ホワイト」で知られるセリス醸造所(※2)、世界最大規模のレビューサイト(※3)で世界一になったこともあるストライセ醸造所などを考えています。

激動の時代を乗り切って未来をつくるために、思い描くロードマップは壮大です。

※1 オランダ語で「仲間」の意味。EVER BREW社内におけるスタッフの呼称

※2  ベルギーのヒューガルデン村を発祥とするベルジャンホワイトエール「ヒューガルデン・ホワイト」の生みの親である、故ピエール・セリス氏がアメリカのテキサス州で1992年に立ち上げた醸造所。現在はセリス氏の娘のクリスティーヌ・セリス氏と彼の孫にあたるデイトナ氏によって再興・運営されている。

※3 2008年、ビールにおける世界最大規模のユーザー参加型レビューサイト「Ratebeer.com」で世界一の醸造所として認められた

取材・文/山口 紗佳

鈴木オーナー

3Lという樽のサイズ感は、親しい間柄の人とくつろぎながら飲むのにちょうどいいんじゃないでしょうか。自社で直輸入したベルギー酵母を使って、RIO BREWINGにしか表現できないビールをフレッシュな状態でお届けしたいと思います。

OTHER BREWERIES

その他のブルワリー

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Monterey Brewing

長野県塩尻市

福島のおいしいビールをお届けすることが一番の恩返しになるから、技術を磨き続ける。

みちのく福島路ビールは、福島市郊外の丘陵にあるアンナガーデン内に1997年に創業された家族経営の醸造所。吾妻山系を臨むうつくしいガーデン内で、厳選された原料と地元の果物を使ってつくられるビールにはファンも多くいます。現在醸造長を務める吉田真二さんは、2009年にホテルの仕事からビール醸造の世界に飛び込みました。醸造への不安や、東日本大震災によって何度も壁に当たりますが、その度に手を差し伸べてくれたお客さんやブルワー仲間、家族がいました。多くの人たちとの助け合いの輪が、今のみちのく福島路ビールのおいしさにつながっています。

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福島路ビール(福島県)吉田 真二

福島県福島市

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カルテットブルーイング(長野県)椎名 将

長野県軽井沢町

もっと自由に!もっと面白く!もっと気軽に!クラフトビールを身近なものにしたい

「Vector Brewing」がある東京都台東区浅草橋は、下町の情緒が残るモノづくりの町。2016年に新宿で誕生した醸造所は、2017年に醸造の拠点を浅草橋に移し、常に“面白い”ビールを発信しています。それはクラフトビールをもっと自由で気軽に楽しんでもらうため。ユニークなデザインとネーミング、豊富なラインナップは初心者でも手に取りやく、クラフトビールファンをジワジワと増やしています。元銀行員でラガーマンだという異色の経歴をお持ちのブルワー三木敬介さんにお話を伺いました。

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VECTOR BREWING

東京都大田区

ビール文化が根づいたカナダのように、日本でもおいしいビールを気軽に

北海道の中部、石狩平野の中央にある江別市は、国産小麦の代表格として知られる「ハルユタカ」が生まれた土地。パンや麵、スイーツ、ビール醸造に適した国産品種がいくつも誕生した日本有数の小麦の産地です。札幌市の中心部から近く、空港や港湾へのアクセスも良いことから、生活に便利なベッドタウンでもあります。その江別自慢の「ハルユタカ」を使ってビールを醸造しているのが、2009年から江別市で醸造をしている「NORTH ISLAND BEER」。元ヘッドブルワーで現在は取締役工場長を務める多賀谷壮さんにお話を聞きました。

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NORTH ISLAD BEER(北海道)多賀谷 壮

北海道江別市

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