ビールの縁側

それぞれ研鑽を積んだ二人の個性がバランスして、 Beer Brainのビールを調和してくれるんです。

さまざまな立場からビールに向き合った10年間。 根底にはアメリカのビアカルチャーがありました。

秋葉原駅からつくばエクスプレスで約30分。柏の葉キャンパス駅の近くにある「Beer Brain Brewery」は、東京都港区で営業するトレーラーハウス型のビアバー「BEER BRAIN」から誕生したブルーパブです。ビール好きの建築家やデザイナー、大学教授、アーティストから成る「Tokyo Beer Boyz」によって、「昼間からビールが飲める隠れ家」をイメージした移動式ビアバーBEER BRAINが生まれ、2020年4月に千葉県柏市で自社醸造がスタートしました。ブルワーを務める北原洋生さんと七五三裕之さんにお話を聞きました。

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北原:僕から見た七五三君は仕事が細やか。日本人らしい思慮深さがあって、細かいところによく気がつくんですよね。僕は感覚で動くところがあるので、粗い部分のサポートに助けられています。

七五三:革新的な発想ができる北原さんと比べると僕は保守的なので、役割としてはブレーキなのかなと(笑)。例えば新しいIPAを仕込む際、北原さんがホップを大量に使ったとして、僕はどうしてもリスクを考えて尻込みしてしまう。大胆なチャレンジができるところやセンスの良さ、ビールに対する鋭い感性は僕にはないものなんですよね。

北原:新潟の飲食店でシェフをしていた僕がビールに携わるようになったのが、2010年にアイリッシュパブの店長に就任したこと。国内外のクラフトビールを扱うようになって、その奥深さにのめり込んでいきました。次第にもっと本格的にビールに携わりたいと思い始めて、3年勤めたパブを退職して新潟から横浜へ。お取引のあったアメリカのクラフトビールの輸入を行う「ナガノトレーディング」が、横浜の関内で自社のビアバー「Antenna America」をオープンするタイミングで、短期間アルバイトすることになったんです。Antenna America で3か月間、アメリカンクラフトビールにどっぷり浸った後はカリフォルニア州に渡米しました。目的はもちろんビール。世界中で大流行したアメリカ西海岸のブルワリー発祥の「ウエストコーストIPA」に惚れ込んで、自分の目で見て回りたいと思ったんです。

 

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現地在住のALTの先生にナビゲートしてもらって、カリフォルニア州を縦断すること2カ月間。彼のツテで知人の家やモーテルに泊まったり、あるときはキャンプしたり、ビールのイベントに参加したり、現地のビールカルチャーを心と体にしっかり刻んで帰国。再び地元の新潟に戻り、2013年9月から「スワンレイクビール」を醸造する「瓢湖屋敷の杜ブルワリー」で醸造担当として働き始めることになりました。渡米前に「働かないか?」とお誘いいただいて、これ上ないご縁に恵まれた流れです。

日本のクラフトビール黎明期に創業したスワンレイクでは、高い品質を維持しながら定番を造り続ける大切さを学びました。クラシカルなスタイルを20年以上も仕込んでいますからね。技術的なことはもちろん、ビールに向き合う姿勢や基本的な考え方が身についたと思います。スワンレイクで4年間、醸造担当をしながらやがて独立も考えるようになった僕は2017年に退職して再び新潟から横浜へ。クラフトビールとグリル料理を扱う「CHARCOAL GRILL GREEN」で、ビール関係のマネージャーとして働くことになりました。

 

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立ち位置としては、ブルワーからビールを提供する側に戻ることになりましたが、完全に醸造から離れたかというとそうでもなくて。近所に「横浜ビール」や「横浜ベイブルーイング」があって、ブルワー同士の交流も活発だったので、仕込みを手伝うなど醸造に携わる機会は多かったんです。ビアバーやブルーパブが多い横浜ではビールの話題に事欠かないので、常にトレンドに触れることができました。その頃でしたね。『TRANSPORTER BEER MAGAZINE』の編集長、田嶋伸浩さんを通じてBeer Brain Breweryの話をいただいたのは。

話を聞けば、Beer Brain Breweryは新しいスタイルやトレンドも取り入れながら、基本的には自由に造ることができること、企画した「TOKYO BEER BOYZ」のメンバーでオーナー福間の人間性にも惹かれて、ブルワーとしての再スタートを決めました。加えて言えば、店づくりのセンスが良いことも(笑)。トレーラーハウスの「Beer Brain」もそうですが、とにかくデザインがおしゃれなんですよね。

 

思い入れのある地で自己裁量のあるビール造り。 これはキャリアアップになる!と食いついたんです(笑)

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七五三:北原さんにBeer Brain Breweryの話を聞いて、自分から飛びつきました(笑)。

ブルワーとしても魅力的でしたし、僕は柏市にある千葉大学に通っていたので、柏の葉キャンパス駅周辺は馴染みのある場所だったんです。学生時代にクラフトビールに目覚めた僕にとって、思い入れのある土地です。

大学で農業経済学を専攻していた僕は、クラフトビールのマーケティングをテーマにした卒論を取りまとめました。取材を兼ねてブルワリーやビアバーを巡ったり、ボランティアスタッフとしてビアフェスの運営を手伝ったり、ブルワリーで開催されていたビール造り体験に参加してみたり。すっかりビールがライフスタイルの軸になっていました。ただ、卒論に取り組んだのが就職活動を終えた後だったので、卒業後は地元の福岡県北九州市に戻って、ビールとは関係ない企業に就職したんです。ところがやはりビール関係の仕事に就きたいという思いが強くなって、ビールメーカーへの転職を検討していました。

そこで求人があったのが、広島県呉市にある「呉ビール」。

「海軍さんの麦酒」で知られる老舗ブルワリーで、ピルスナーやヴァイツェン、アルトなど伝統的なドイツ式のビアスタイルを得意としています。呉ビールの完成度の高いピルスナーが好きだった僕はすぐに応募して、2015年2月に入社。ブルワーとして一から醸造を学び、約4年間ブルワーとして経験を積みました。

北原さんとは、お互い勤めていたブルワリーが出店していた横浜のJAPAN BREWERS CUP(※1)を通じて知り合って、飲みに行くなど交流があったんです。そこでBeer Brain Breweryの立ち上げに加わる話を聞いて、「僕も働きたい!」と食いつきました(笑)。土地馴染みがあったことも理由ですが、これはブルワーとしてキャリアアップになると思って。ただ、当初の事業計画から遅れていたので、呉ビール退職後は北九州のビアバーに1年間勤めていました。そして立ち上げに合わせて2019年秋に千葉へ。Beer Brain Brewery は2020年3月末に免許を取得して、4月1日に初仕込みを迎えました。

 

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北原:Beer Brain Breweryのビールは、きれいですっきりとした味わいのウエストコーストスタイルのIPAをメインとしながら、さまざまな副原料を取り入れた季節限定も予定しています。同じブルワーでも素地や積んできた経験が違いますから、それがうまい具合に噛み合ってビールが成り立っています。お互いの長所を活かして、短所を補い合うことで、ビールとしてのバランスがとれているんでしょうね。

今後の構想にあるのは、千葉大学と協力しながら取り組む循環型農業。

具体的には、大学の研究圃場で栽培する農作物に、醸造過程で出た麦芽粕を有機肥料として使い、麦芽粕肥料で栽培した野菜や果物を再びビールの材料として使うんです。仕込みのたびに大量に出る麦芽粕を無駄にせず、再活用してビールに還元します。このビールを通じた食品サイクルの継続を目指したいと思っています。

(※1)毎年横浜で開催されるビールの審査会とビアフェスティバルが2本立てになったイベント。審査会はブルワーのみが審査員として参加し、ディスカッションなしのブラインドティスティングによるランキング形式でビールを審査する。

 

 

取材・文/山口 紗佳

鈴木オーナー

ホップのみずみずしさを感じられるIPAがイチ押しです。主にオレゴン州のホップファーマーから輸入した質の良いホップを使って、香りと苦味のキャラクターを引き出す製法で造っているので、ホップの魅力を樽生ビールで感じてください。

OTHER BREWERIES

その他のブルワリー

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Monterey Brewing

長野県塩尻市

福島のおいしいビールをお届けすることが一番の恩返しになるから、技術を磨き続ける。

みちのく福島路ビールは、福島市郊外の丘陵にあるアンナガーデン内に1997年に創業された家族経営の醸造所。吾妻山系を臨むうつくしいガーデン内で、厳選された原料と地元の果物を使ってつくられるビールにはファンも多くいます。現在醸造長を務める吉田真二さんは、2009年にホテルの仕事からビール醸造の世界に飛び込みました。醸造への不安や、東日本大震災によって何度も壁に当たりますが、その度に手を差し伸べてくれたお客さんやブルワー仲間、家族がいました。多くの人たちとの助け合いの輪が、今のみちのく福島路ビールのおいしさにつながっています。

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福島路ビール(福島県)吉田 真二

福島県福島市

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カルテットブルーイング(長野県)椎名 将

長野県軽井沢町

もっと自由に!もっと面白く!もっと気軽に!クラフトビールを身近なものにしたい

「Vector Brewing」がある東京都台東区浅草橋は、下町の情緒が残るモノづくりの町。2016年に新宿で誕生した醸造所は、2017年に醸造の拠点を浅草橋に移し、常に“面白い”ビールを発信しています。それはクラフトビールをもっと自由で気軽に楽しんでもらうため。ユニークなデザインとネーミング、豊富なラインナップは初心者でも手に取りやく、クラフトビールファンをジワジワと増やしています。元銀行員でラガーマンだという異色の経歴をお持ちのブルワー三木敬介さんにお話を伺いました。

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VECTOR BREWING

東京都大田区

ビール文化が根づいたカナダのように、日本でもおいしいビールを気軽に

北海道の中部、石狩平野の中央にある江別市は、国産小麦の代表格として知られる「ハルユタカ」が生まれた土地。パンや麵、スイーツ、ビール醸造に適した国産品種がいくつも誕生した日本有数の小麦の産地です。札幌市の中心部から近く、空港や港湾へのアクセスも良いことから、生活に便利なベッドタウンでもあります。その江別自慢の「ハルユタカ」を使ってビールを醸造しているのが、2009年から江別市で醸造をしている「NORTH ISLAND BEER」。元ヘッドブルワーで現在は取締役工場長を務める多賀谷壮さんにお話を聞きました。

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NORTH ISLAD BEER(北海道)多賀谷 壮

北海道江別市

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