ビールの縁側

プロダクトに対して評価が返ってくる。 扱うものがビールになって、僕は息を吹き返したんだ。

メキシコ料理×アメリカンクラフトビール。 2人の情熱をかけたメイドイン福岡のビールを

福岡県福岡市中央区。
九州地方最大の都市である福岡市の中心部にある中央区は、九州を代表する繁華街の天神をはじめ、大名、今泉、長浜など福岡市の中心市街として発展しています。天神の西隣、アパレルショップや人気の飲食店が軒を連ねる大名エリアで、2018年6月に醸造を始めたのがブリューパブ「FUKUOKA CRAFT by エルボラーチョ」。福岡と東京で展開するメキシコ料理レストラン「エルボラーチョ」の新事業である都市型ブルワリーです。「Fukuoka Craft Brewery」のブルワーを務めるDavid Victorさんにお話を聞きました。

ときどきブルワリールームからタップルームの様子を見るんだけど、おいしそうに何杯も飲む人もいれば、グラスにビールを残したまま帰る人もいる。残されたビールを見ると「おいしくなかったのかな」って思いますよね。コミュニケーションがなくても、状況を見るだけでもビールに対する反応がだいたいわかる。もちろん、飲んだ人から直接ビールの感想をもらうことも多いです。 肯定的な意見でも否定的な意見でも、自分のプロダクトに対して反応があるのは幸せなことだと思います。フィードバックがあるとモチベーションにつながりますしね。翻訳の仕事をしていたときは、数か月かけた成果物を納品しても、クライアントから無反応ということが少なくなかったですから。僕としては、「あの表現で正しかったのか?」「イメージのズレはなかっただろうか」って、気になることもあるので反応がないのは悲しい。扱うものが「言語」から「ビール」に変わって、想いを込めたビールをお客さんに楽しんでもらえて、僕は息を吹き返したような気がしたんです。

2002年の来日からおよそ20年。

大学の交換留学生として訪れた日本、九州が気に入ったことから、はじめは英語教師として日本で働くようになりました。それから大分にある大学事務職などを経て、翻訳の仕事につくようになって8年。クラフトビールが浸透していなかった時代から、日本の大手メーカーのビールはレベルが高いと感じていました。

2011年頃から日本のクラフトビールを飲むようになって、北九州の「門司港ビール」や広島の「呉ビール」、鳥取の「大山Gビール」は特においしかったのを覚えています。オクトーバーフェストや九州ビアフェスティバルなど、イベントがあれば積極的に参加して、クラフトビールの魅力にどんどん惹かれていきました。やがて飲み手からボランティアスタッフとしてビールやブルワーと接するうちに、「福岡で自分のブルワリーを開きたい」と思うようになったんです。ビールは大好きですし、ずっとデスクワークを続けてきたので、手や体を動かす「モノづくり」の仕事に憧れがありました。ところが、醸造経験も販売経験もない僕がビールの製造免許を取得するのは想像以上にハードルが高かった。そこで醸造経験を積むために、他のブルワリーで研修を受けることにしたんです。

 

アプローチしたのが東京の「DevilCraft Brewery(デビルクラフトブルワリー)」。3人のオーナーが同じアメリカ人ということもあって、彼らのスタンスはとてもフランクでオープン。ブルワリー起業の相談をすると、快く受け入れてもらえました。本やネットで調べた知識はあっても経験に勝るものはありません。実際に体験してみたビール造りはとても興味深くて、彼らのビール造りに対する姿勢にも感銘を受けて、情熱はますます強いものになりました。

それでも道のりは険しいもので、資金調達面からもブルワリー起業は難航。

そんなとき、ブルワーを探していたオーナーの杉山芳文と出会ったんです。彼は「日本人に本物のメキシコ料理を食べさせたい」という熱意で現地のメキシコ料理店で修行を積み、日本でメキシコ料理店オープンしてからも毎年メキシコを訪問して本場のトレンドを取り入れています。常に「本格」を求めるオーナーで、お酒に関しても「本物」を提供したいという思いから、スパイシーで味の濃いメキシコ料理とバランスがとれるビールに興味をもったようで。現地のクラフトビール事情にも詳しいし、とにかくパッションがすごかった。

自社でブルーパブを立ち上げて、メキシコ料理と相性の良いビールを造るという構想を熱っぽく語るのを聞いて、僕たちはすっかり意気投合。「FUKUOKA CRAFT」なら、僕が造りたいアメリカンスタイルのビールが造れますし、アメリカの流れを汲んだメキシコ料理との相性も間違いないはず。お互いの情熱をかけてメイドイン福岡のビールを造ろうと、二人の気持ちがぴったり合わさって、面接を受けたその日に採用が決まりました(笑)。

 

最初に仕込んだビールは廃棄。 納得したものだけを提供したいから

2017年のブルワリーの立ち上げから協力することになりましたが、飲食店が醸造をはじめるのは福岡では初めてだったので、2018年3月 に製造免許がおりて醸造、販売を始めるまでに1年。その間に僕は山梨県の「Outsider Brewing(アウトサイダー ブルーイング)」で研修を受け、アメリカの醸造設備メーカー「Portland Kettle Works(ポートランド ケトル ワークス)」の醸造アカデミーにも参加。実際に使う設備メーカーからノウハウを教えてもらえるのはとても参考になりましたね。

とはいえ、600Lの商業タンクを動かすのは初めての経験です。どうやら設備機器の配管がまずかったようで、最初に仕込んだものは大失敗だったんです。残念ながらおいしくなかった……。納得したものじゃないと提供できないので、泣く泣くそのビールは廃棄して、改めて設備を調整して各部をブラッシュアップして、2回目の仕込みでようやくお客様に提供できるビールに仕上がりました。

 

定番として造っているのは2種類。

シトラとモザイクの柑橘系のホップの香りがしっかりと感じられる「ペールエール」と、パッションフルーツを思わせる香りが特徴のホップ、ギャラクシーを中心にトロピカルな香りをきかせたジューシーな「ヘイジーIPA」です。樽生のビールが飲めるのはここ(併設パブ)と主に九州のビアバーが中心ですが、皆さんが手に取りやすいように缶でも販売しています。

発酵タンクが2つなので製造量に限りがありますが、コロナ禍で仕込みが減ってしまった今だからこそできる新しいことに挑戦したいですね。今後は福岡クラフト初の「ダブルヘイジーIPA」を仕込む予定です。

福岡のまちがもっとおもしろくなるように、僕たちの情熱をかけたFUKUOKA CRAFTが、クラフトビール文化の広がりのきっかけになれたらいいですね。

 

鈴木オーナー

一人で仕込むので少量生産ですが、ハンドメイドならではのこだわりと情熱を込めてビールを造っています。
福岡から日本全国の皆さんに、アメリカンビールのおいしさと僕の想いが届きますように!

OTHER BREWERIES

その他のブルワリー

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Monterey Brewing

長野県塩尻市

福島のおいしいビールをお届けすることが一番の恩返しになるから、技術を磨き続ける。

みちのく福島路ビールは、福島市郊外の丘陵にあるアンナガーデン内に1997年に創業された家族経営の醸造所。吾妻山系を臨むうつくしいガーデン内で、厳選された原料と地元の果物を使ってつくられるビールにはファンも多くいます。現在醸造長を務める吉田真二さんは、2009年にホテルの仕事からビール醸造の世界に飛び込みました。醸造への不安や、東日本大震災によって何度も壁に当たりますが、その度に手を差し伸べてくれたお客さんやブルワー仲間、家族がいました。多くの人たちとの助け合いの輪が、今のみちのく福島路ビールのおいしさにつながっています。

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福島路ビール(福島県)吉田 真二

福島県福島市

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カルテットブルーイング(長野県)椎名 将

長野県軽井沢町

もっと自由に!もっと面白く!もっと気軽に!クラフトビールを身近なものにしたい

「Vector Brewing」がある東京都台東区浅草橋は、下町の情緒が残るモノづくりの町。2016年に新宿で誕生した醸造所は、2017年に醸造の拠点を浅草橋に移し、常に“面白い”ビールを発信しています。それはクラフトビールをもっと自由で気軽に楽しんでもらうため。ユニークなデザインとネーミング、豊富なラインナップは初心者でも手に取りやく、クラフトビールファンをジワジワと増やしています。元銀行員でラガーマンだという異色の経歴をお持ちのブルワー三木敬介さんにお話を伺いました。

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VECTOR BREWING

東京都大田区

ビール文化が根づいたカナダのように、日本でもおいしいビールを気軽に

北海道の中部、石狩平野の中央にある江別市は、国産小麦の代表格として知られる「ハルユタカ」が生まれた土地。パンや麵、スイーツ、ビール醸造に適した国産品種がいくつも誕生した日本有数の小麦の産地です。札幌市の中心部から近く、空港や港湾へのアクセスも良いことから、生活に便利なベッドタウンでもあります。その江別自慢の「ハルユタカ」を使ってビールを醸造しているのが、2009年から江別市で醸造をしている「NORTH ISLAND BEER」。元ヘッドブルワーで現在は取締役工場長を務める多賀谷壮さんにお話を聞きました。

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NORTH ISLAD BEER(北海道)多賀谷 壮

北海道江別市

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