ビールの縁側

驚きや感動、おもしろさで心を揺さぶる1杯に 潜在能力の高いヘイジーIPAで、横浜を夢中にさせたい。

飲みやすいものはたくさんある。 でも1杯で満足できるものは少ないですよね。

神奈川県横浜市みなとみらい地区。
首都圏の新都心として再開発が進められてきたみなとみらい地区は、横浜ランドマークタワーや横浜赤レンガ倉庫、クイーンズスクエア横浜などの観光名所が集まるウォーターフロント都市です。オフィスやホテルも集中する人気のベイエリアに2019年オープンしたのが、2,311室を擁する地上35階建ての超高層大型ホテル「アパホテル&リゾート 横浜ベイタワー」。その1Fにあるのが都内にビストロを構える株式会社トリプルアールが運営する「REVO BREWING」です。ヘッドブルワーの水沼泰樹さんにお話を聞きました。

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日本人は遺伝的にお酒が弱いですよね。欧米人と比べてアルコールの分解機能が弱いので、お酒をガブガブ飲める体質じゃない。お酒に強くないからすっきりしたものを好む人が多いですが、飲みやすいからといって大量に飲むとつらいでしょう。だからREVO BREWINGではゆっくり味わえるもの、1杯で満足できるヘイジーIPA(※1)をメインにしています。今出している「横浜家系IPA」は、オレンジやマンゴー、トロピカルフルーツのような果実感のある香りと、とろっとした濃厚なネクターのような味わいが特徴。大衆に愛されるピルスナーをあっさりした醤油ラーメンとすると、こってり濃厚な印象のある横浜家系ラーメンはREVOのHazy IPAに似ているなと思って名付けました(笑)。

わかりやすいし、インパクトもあるでしょう。

REVO BREWINGのコンセプトは「アメリカ西海岸」。

レストランの内装にもロサンゼルスやサンディエゴ、ポートランドの雰囲気を取り入れています。ですからビールも現地で大人気のIPA、中でも熱狂的なファンが多いヘイジーIPAを中心に造っています。

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僕自身もアメリカ西海岸のビールやカルチャーが好きなんです。
当時はちょうど地元の茅ケ崎に戻ることも考えていた時期だったので、西海岸系のビール文化を伝えたいという会社のコンセプトとぴったりハマって、2019年6月からヘッドブルワーとして加わりました。

それまでは埼玉のCOEDOビールの醸造を担当していました。
遡れば、僕がビールを意識しはじめたのはお酒好きな両親の影響でしょうね。楽しい時間をつくることができるお酒に興味が湧いて、大学は食品や微生物を学べる農学系の学部を専攻。酵母や発酵の研究に取り組みました。そして地元の茅ケ崎にある蔵元、熊澤酒造で酒造りのアルバイトをしていたんです。

最初は日本酒造りの手伝いで、原料の米に水を吸わせる作業や、蒸米に麹菌をまぶして米麴を育てる麹造りをしていましたが「ビール造りもやってみる?」って誘われて。やってみたらこれがおもしろかったんです。楽しみながらビールと接していたことも、ポジティブなイメージとつながっていると思います。湘南ビール(※2)のヘッドブルワー筒井貴史さんが親しみやすい人柄で、サッカーなど趣味の話も波長が合ったので働くのが楽しかったですね。醸造技術だけではなく、ビール造りに対する姿勢も学ぶことが多かったです。

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そこからビールの幅広さを知るようになって、イベントの手伝いやビアバーも行くようになりました。その流れでブルワーとして働くことを考えるようになりましたが、あいにく熊澤酒造は人手が足りていたので、片っ端からビールメーカーに問い合わせて2013年4月にコエドブルワリーに入社することに。

コエドブルワリーはクラフトビールメーカーの中では規模が大きな会社なので、さまざまなことを学ぶことができました。6年間という短い間に、3種類の異なる設備で醸造を経験できたのはなかなかできない貴重な経験だと思います。

まず、入社当時の三芳町の工場で使っていたマニュアル設備。
1997年の設立当時から使っている昔ながらのアナログで、手動操作が多い反面、ビール醸造の基本的な仕組みを学べます。次に、2016年に工場拡張のために移転した東松山工場の大型設備。これは自動化が進んだ最新設備で、プログラムで動くオートメーションシステムです。そして、3つ目は2015年にコエドブルワリー創業の地、川越にあった建物をリノベーションして開設した「COEDO Craft Beer 1000 Labo」(※3)。これはラボという名前の通り、1000Lの小規模な設備で1000種類のビールを試作するための工場です。小ロットな設備でスポット商品や企業とのコラボ商品、テスト醸造をメインに手掛けていました。こうして6年間、コエドブルワリーでキャリアを積んだところにREVO BREWING立ち上げの話をいただいて、新天地の横浜へ。

(※1) IPAから派生したスタイル。ヘイジー(HAZY)=濁りのある見た目が特徴で、ホップを大量に使うことから香りはフルーティでジューシーな果実感が強いが、苦味は少なく、口当たりはなめらか。「ニューイングランドIPA」「ノースコーストIPA」「ジューシーIPA」とも呼ばれる。
(※2) 熊澤酒造が1996年から製造しているビールブランド。
(※3) 現在は場所を移転し、川越駅西口で「COEDO BREWERY THE RESTAURANT」として営業。

「選べるヘイジー」でクラフトビールの良さと世界観を伝えたい

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ホテルのグランドオープンに合わせて、2019年9月20日にブルワリーレストランの開店が決まっていましたが、醸造免許がとれたのが8月末のギリギリ。9月1日に仕込み初めで開店時になんとか1種類のハウスビールを間に合わせて、アメリカのポートランドにあるカルミネーション・ブルーイングとのコラボビールも提供しました。

反響の多かったのは、やっぱり“アパ社長ビール”ですね(笑)。

「I am “THE” President」は、アパホテルのテナントとしてやるからには、何かおもしろいことをやりたいと思って企画したもので、元谷芙美子社長の顔写真がプリントされたグラスのインパクトもあってセンセーショナルだったようです(笑)。おかげで世間にはすっかりアパホテルの直営だと思われてしまいましたが、知ってもらえるきっかけになったと思います。

みなとみらいの夜景や象徴的な観覧車、ここにはビールをおいしくする景色も揃っています。ホテル1階や観光スポットという利便性から、REVO BREWINGで初めてクラフトビールに触れる方も多いと思うんです。初体験のお客様には今までの常識を覆すビールで驚きやおもしろさを感じてもらいたいですね。

ひと口に「ヘイジーIPA」といっても幅広くアレンジがきくスタイルです。

理想は、神奈川名産の柑橘や桃など、国産のフルーツを使ったジュースのようなヘイジーから酸味をきかせたサワータイプ、乳糖を加えたクリーミーなミルクシェイクIPA、アルコール度数を抑えたセッションヘイジーなど、ライトなものから飲みごたえのあるタイプまでバリエーションを増やすこと。好きなものを選べるのもクラフトの良さですから。

横浜らしいロケーションも海外ゲストが多い客層も、ヘイジーIPAも、これまで経験したことがない世界。でも新しいことに挑戦できる環境はモチベーションも上がりますし、横浜の玄関口で横浜のクラフトビール文化を盛り上げることに貢献できればと思っています。飲んだ人の心を動かすようなヘイジーで、もっと横浜を夢中にさせたいですね。

取材・文/山口 紗佳

鈴木オーナー

好きなタイミングで好きな量だけ、マイペースに楽しめるのもビールの魅力だと思います。ゆっくり楽しむのも良し、みんなでワイワイやるのも良し、1杯でも満足できるヘイジーIPAを楽しみください。

OTHER BREWERIES

その他のブルワリー

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Monterey Brewing

長野県塩尻市

福島のおいしいビールをお届けすることが一番の恩返しになるから、技術を磨き続ける。

みちのく福島路ビールは、福島市郊外の丘陵にあるアンナガーデン内に1997年に創業された家族経営の醸造所。吾妻山系を臨むうつくしいガーデン内で、厳選された原料と地元の果物を使ってつくられるビールにはファンも多くいます。現在醸造長を務める吉田真二さんは、2009年にホテルの仕事からビール醸造の世界に飛び込みました。醸造への不安や、東日本大震災によって何度も壁に当たりますが、その度に手を差し伸べてくれたお客さんやブルワー仲間、家族がいました。多くの人たちとの助け合いの輪が、今のみちのく福島路ビールのおいしさにつながっています。

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福島路ビール(福島県)吉田 真二

福島県福島市

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カルテットブルーイング(長野県)椎名 将

長野県軽井沢町

もっと自由に!もっと面白く!もっと気軽に!クラフトビールを身近なものにしたい

「Vector Brewing」がある東京都台東区浅草橋は、下町の情緒が残るモノづくりの町。2016年に新宿で誕生した醸造所は、2017年に醸造の拠点を浅草橋に移し、常に“面白い”ビールを発信しています。それはクラフトビールをもっと自由で気軽に楽しんでもらうため。ユニークなデザインとネーミング、豊富なラインナップは初心者でも手に取りやく、クラフトビールファンをジワジワと増やしています。元銀行員でラガーマンだという異色の経歴をお持ちのブルワー三木敬介さんにお話を伺いました。

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VECTOR BREWING

東京都大田区

ビール文化が根づいたカナダのように、日本でもおいしいビールを気軽に

北海道の中部、石狩平野の中央にある江別市は、国産小麦の代表格として知られる「ハルユタカ」が生まれた土地。パンや麵、スイーツ、ビール醸造に適した国産品種がいくつも誕生した日本有数の小麦の産地です。札幌市の中心部から近く、空港や港湾へのアクセスも良いことから、生活に便利なベッドタウンでもあります。その江別自慢の「ハルユタカ」を使ってビールを醸造しているのが、2009年から江別市で醸造をしている「NORTH ISLAND BEER」。元ヘッドブルワーで現在は取締役工場長を務める多賀谷壮さんにお話を聞きました。

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NORTH ISLAD BEER(北海道)多賀谷 壮

北海道江別市

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