更新日:2025/07/10
公開日:2024/08/29
ペールエールの特徴や歴史、クラフトビールの基本もご紹介
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目次
ペールエールは、もっともポピュラーなビアスタイルのひとつです。クラフトビール好きなら、一度は耳にしたことがあるでしょう。酵母由来のフルーティーな香りと麦芽のコクに、ホップのさわやかな苦味。つい何杯も飲みたくなるような、飽きのこない味わいが魅力です。とはいえ、一口にペールエールといっても、そのキャラクターは多種多様。
この記事では、ビールの歴史や特徴とともに、おすすめの銘柄をご紹介します。
初めに知っておきたい!クラフトビールのスタイル
世界には150種類以上のビアスタイルがあるといわれていますが、ビールの種類は、まず、発酵方法によって「エール(上面発酵)」「ラガー(下面発酵)」「自然発酵」の3つに分類されます。この違いを知るだけでも、数多くあるビールの特徴がつかめるようになります。
ラガー系
「ラガー」は、低温で長期熟成する下面発酵でつくられるビールです。
すっきりとした味わいと、ゴクゴクと飲めるのどごしの良さが特徴的。日本の大手メーカーで製造されるビールもこのタイプです。
ラガーは、15世紀頃のドイツで誕生したといわれていて、ドイツ語で「貯蔵」を意味する「LAGERN(ラーゲルン)」から名付けられています。
主なビアスタイルには、ピルスナー、アメリカンラガー、メルツェン、シュバルツなどがあります。
エール系
「エール」は、常温に近い温度で発酵する上面発酵でつくられます。
フルーティで豊かな香りが特徴で、じっくりと味わうビールです。クラフトビールに多いタイプで、近年では、エール系ビールの人気が高まっています。
エールは、ラガーよりも歴史が古く、下面発酵のラガーが登場する前は、ほとんどのビールが上面発酵でした。「エール」とは、中世以前からイギリスで呼ばれていた名前です。
主なビアスタイルには、ペールエール、IPA、ヴァイツェン、スタウトなどがあります。
自然発酵系
「自然発酵」は、培養した人工の酵母ではなく、自然界に生息する野生酵母で自然発酵させたビールです。
代表的なビアスタイルは、ベルギーの「ランビック」で、酵母由来の野性味あふれる香りと、強い酸味が特徴です。空気中や木樽に宿る野生酵母を使用し、長期間熟成してつくられます。
自然発酵は、もっとも古典的な醸造方法ですが、近年では、野生酵母を使わず、フルーツから採取した天然酵母を使用して、自然発酵させる方法もあります。
ペールエールとは?
ペールエールは、イギリス生まれのビアスタイルです。15〜20℃前後で発酵させる「上面発酵」という方法で、リンゴやハチミツを思わせるような香りを引き出します。そこへ、ホップの苦味とさわやかな香りをプラス。ほどよい厚みのある、ふくよかな味わいを楽しめます。
ペールエールは、決して派手な味ではありません。しかしそれゆえに、技術が問われるスタイルでもあります。ペールエールをフラッグシップに掲げ、個性をアピールしているブルワリーも多いですよ。
基本情報
発祥国 | イギリス |
---|---|
発酵方法 | 上面発酵 |
アルコール度数 | 4.5~5.5% |
ビールの色合い | 黄金色~琥珀色 |
味の特徴 | 苦味とフルーティーな香りのバランスがとれた、ふくよかな味わい |
ペールエールの発祥・歴史
ペールエールは、イギリスのバートンという町で生まれました。麦芽のまろやかさと、酵母のフルーティーな香り。それらを、ホップの上品な苦味がまとめあげています。芳醇な味わいとオレンジイエローの淡い色に、人々は夢中になりました。
ちなみに、当時のイギリスでは、濃色系のビールが主流だったそう。そのため、「淡い(ペール)エール」と名付けられたのです。
ペールエールのおいしさは世界中に広まり、海外への輸出が増えていきました。長い船旅に耐えられるようにと、防腐効果のあるホップを大量に投入。これが、インディア・ペールエール、つまり「IPA」の始まりです。
ペールエールは18世紀のイギリスで誕生
「ペールエール」は、イギリスのバートン・オン・トレントという町で誕生しました。麦芽のまろやかさと、酵母のフルーティーな香り。それらを、ホップの上品な苦味がまとめあげています。
誕生のきっかけは、1697年のビール麦芽への課税です。醸造家たちは、麦芽の量を減らしホップを増やしたペールエールをつくり出したのです。
当時のイギリスでは、濃色のものや濁っているものが主流だったため、「淡い(ペール)エール」と名付けられました。透き通ったブロンズ色のビールは斬新で、大人気となりました。
「バートン化」技法により世界中に普及
ペールエールの誕生後、大人気となったこのビールをつくろうと、バートン以外の地域でも醸造が試みられました。しかし、同じようなブロンズ色のビールが再現できません。
その要因は、水の硬度にあることが判明します。バートンの水質は「硬度がかなり高い硬水」です。対して、他の地域では「軟水」が使われていました。
そこで、軟水を硬水に調整して醸造する技術を開発し、バートンの名前にちなみ「バートン化」技法と名付けました。これにより、ペールエールは世界中に広がりました。
IPA(インディアペールエール)の誕生
「IPA(インディア・ペールエール)」は、18世紀末頃のイギリスで誕生しました。強いホップの苦味と、やや高めのアルコール度数が特徴です。
イギリスの植民地だったインドにペールエールを輸送していたことが由来で、「インディア」の名を冠しています。
長時間、船でビールを運ぶ際、劣化を防ぐためにホップを大量に使用し、アルコール度数を高めにしたといわれています。これにより、ホップの苦味と香りが際立ったビールが誕生したのです。
アメリカンペールエールの誕生
「アメリカン・ペールエール」は、イギリス発祥のペールエールを、柑橘系の香りを持つアメリカンホップで仕上げることにより誕生しました。
アメリカンホップのフルーティかつフローラルな香りとやや強い苦味が際立っていて、イギリスのペールエールと比べて麦芽の風味は控えめです。
アメリカのクラフトビール草創期に人気を博した商品には、伝統的なビアスタイルをアメリカンホップでアレンジしたものが多くみられます。アメリカンホップがもたらす柑橘系の爽やかな香りが世界中で人気となり、現在のクラフトビールブームにつながっています。
ペールエールの種類
ペールエールには、大きく分けて3つの種類があります。
1つ目は、イングリッシュ・ペールエール。発祥当時の味わいに近いスタイルです。ホップの苦味は控えめで、香りはフルーティー。麦芽のコクやまろやかさを感じます。
2つ目は、アメリカン・ペールエール。ホップの苦味や、華やかな香りを強調したスタイルです。シトラスやトロピカルフルーツを思わせる、アメリカ産のホップを使用しています。
そして3つ目は、ベルジャン・ペールエールです。こちらはベルギー酵母を使用しており、スパイシーなニュアンスが特徴。ペールエールのなかでは、やや個性的な味わいです。
ペールエールと他のエールビールの違い
「ペールエール」は、エール系ビールの代表的なビアスタイルともいえますが、他のエールとは特徴が大きく異なる部分があります。ここでは、主要なエールビールのスタイルを、ペールエールと比較しながら見ていきましょう。
IPA(インディアペールエール)との違い
「IPA(インディア・ペールエール)」は、強いホップの苦味と、やや高めのアルコール度数が特徴のビアスタイルです。イギリスからインドにペールエールを輸送する際、劣化を防ぐためにホップを大量に使用し、アルコール度数を高めにしたことが始まりです。
ホップの苦味による、すっきりとしたドライな味わいは、ペールエールと共通していますが、IPAのほうが、よりホップの苦味と香りが強めです。苦いビールが好きな人や、ホップの香りを堪能したい人には、おすすめです。
ペールエールと同様に、イギリス産ホップを使った伝統的な「イングリッシュスタイル」と、爽やかな柑橘系のアメリカ産ホップで仕上げた「アメリカンスタイル」があります。
ベルジャンホワイト・ヴァイツェンとの違い
「ベルジャンホワイト」と「ヴァイツェン」は、小麦を使ったビールで、「白ビール」とも呼ばれます。大麦麦芽だけを使用するペールエールとは異なり、まろやかな味わいです。
ベルジャンホワイトは、副原料にコリアンダーシードやオレンジピールを使用し、スパイシーな風味もあります。
ベルジャンホワイトとヴァイツェンは、白濁した色合いで、泡立ち、泡持ちが良いなど、小麦ビールならではの特徴があります。苦味成分であるホップの使用がおさえられていることも、ペールエールとは大きく違う特徴です。
ペールエールは、麦芽やホップの香りが強調されたビールですが、ベルジャンホワイトやヴァイツェンは、小麦と酵母によるフルーティな香りが感じられます。
スタウトとの違い
「スタウト」は、ロンドンで流行した「ポーター」がアイルランドに伝わり発展したスタイルの「黒ビール」です。ローストした大麦を使用し、コーヒーのような苦味があります。
ペールエールは「ホップの苦味」が強調されていることに対して、スタウトは「焙煎した麦の苦味」に重点が置かれた味わいなので、苦味の種類に違いがあります。
スタウトは黒ビールなので、ペールエールとはまったく違うように思いますが、実は、共通点があります。スタウトの起源である「ポーター」は、「古くなったブラウンエール」に「新しいブラウンエール」と「ペールエール」の3種を混ぜた「スリースレッド」という飲み方を再現したスタイルです。歴史をたどると、ペールエールがルーツに含まれています。
ペールエールの選び方
ペールエールは、比較的自由度の高いビアスタイルです。ホップの種類や使用量によって印象が大きく変化するため、その味わいはバラエティ豊か。一体どのビールを選べばよいのか、迷ってしまうかもしれません。
まずは、自分はどんなビールが好きなのか、少し考えてみてください。華やかな香りや、はっきりとした苦味がほしい?それとも、こっくりとした旨味を感じたい?お気に入りのビールがあるのなら、そのブルワリーのペールエールを試してみるのもよいでしょう。
イングリッシュかアメリカンかで選ぶ
ペールエールといっても、つくられる国によって味わいはさまざまです。飲みたい味が「ホップ」と「麦芽」どちら寄りかで、ペールエールの種類を選ぶことができます。
「イングリッシュ・ペールエール」は、麦芽の旨味やコクが感じられます。紅茶のような香りを持つイギリス産ホップのほど良い苦味と、ほんのりとした麦芽の甘味がバランスよく楽しめます。
「アメリカン・ペールエール」は、ホップの苦味と香りが堪能できます。アメリカンホップによる柑橘系の香りとやや強い苦味が際立っていて、麦芽の風味は控えめです。
苦さのレベルで選ぶ
ペールエールの苦味は、銘柄によって、強いものから弱いものまでさまざまです。その苦さのレベルである「IBU」からビールを選ぶ方法です。
IBUとは、インターナショナル・ビターネス・ユニッツ(国際苦味単位)の略で、ビールの苦味を数値化したもの。
日本の標準的なビールはIBU15〜30程度で、苦味が強いといわれるビールはIBU50以上です。ビアバーのメニューなどでもおなじみの指標で、クラフトビールの販売サイトでも、商品情報に記載されています。
香りで選ぶ
ペールエールの香りの特徴でもある、ホップの品種から選ぶ方法もおすすめです。
アメリカンホップは、柑橘系のフルーティかつフローラルな香りが最大の魅力です。特にアメリカの代表品種である「カスケード」を使ったペールエールは、国内外でも大人気。イギリスの伝統的なアロマホップ「ケントゴールディングス」の香りは、よく紅茶に例えられます。
近年のクラフトビールブームにより、使用するホップの品種まで紹介されることが多くなりました。ぜひ商品詳細で、使われているホップをチェックしてみましょう。
ペールエールの美味しい飲み方
最後に、ペールエールを美味しく飲むためのコツをご紹介します。
まずは、最適なグラスを選ぶこと。脚付きのチューリップグラスなら、華やかな香りがより引き立ちます。また、イングリッシュペールエールには、パイントグラスがおすすめ。本場のパブにいるような気分に浸れますよ。
それから、急いでゴクゴク飲まないこと。ペールエールは、温度が上がってからも美味しいビールです。1杯のビールをゆっくり味わって、香りや口当たりの変化を楽しんでみてください。
冷やしすぎないように注意
日本ではキンキンに冷えたビールを飲む文化がありますが、ビールには美味しく味わう温度があります。
居酒屋の生ビールなど、のどごしを楽しむラガー系は、冷たいほうが美味しく感じられますが、豊かな味わいのエール系は、常温程度が美味しく飲めるといわれています。
ペールエールの飲みごろ温度は、9〜13℃。華やかな香りを楽しむには、少しぬるいくらいが適温です。冷蔵庫から出したら少し置いて、その間におつまみなどを準備すれば、飲みごろの温度に近づきます。
最適なグラスを選ぶ
ビールの持ち味を存分に楽しむなら、ビアスタイルにあったグラスを選ぶことが大切です。香りが特徴のペールエールには、口の広いグラスが適しています。
特に向いているのが、本場イギリスのパブでも使われている「パイントグラス」です。イギリス製とアメリカ製があり、それぞれに特徴があります。
イギリス製のパイントグラスは、上部にふくらみがあり、香りを際立たせる効果があります。アメリカ製のパイントグラスは、保冷効果を高めるために厚手です。
機能面はもちろんのこと、本場のパブにいるような気分も味わえるので、おすすめです。
>>ビールグラスの選び方とおすすめ10選【ペアグラスや人気のうすはりグラスなど】- ビールの縁側
ゆっくりと味わう
ゴクゴクとのどごしを楽しむ生ビールとは異なり、ペールエールは、五感を使ってじっくりと味わうビールです。
エール系のビールは、芳醇な香りが特徴です。香りは揮発性の物質なので、温度が高いほど感じやすくなります。あわてて飲まなくても、時間による温度変化を楽しむことができます。
ペールエールは、温度が上がってからも美味しいビールです。1杯のビールをゆっくり味わって、香りや口当たりの変化を楽しんでみてください。
ペアリングを考えてペールエールを美味しく味わおう
「ペアリング」とは、お酒と料理や食材の、それぞれの味を美味しく引き立てる組み合わせのこと。特に絶妙な組み合わせは、結婚を意味する「マリアージュ」とも呼ばれます。
ビールはどんな料理にも合うお酒ともいわれますが、ビールには、さまざまスタイルがあり、味わいも多種多様です。それらの特徴に合わせて、料理や食材の味つけを組み合わせることがポイントです。
ここでは、ペールエールを美味しく味わうペアリングのコツを3つ紹介します。
ペアリングのコツ①:ビールと料理の発祥国で合わせる
1つ目は「ビールと料理の発祥国で合わせる」こと。一番わかりやすくて簡単なペアリングです。
ビールや料理は、その土地ならではの食材や風土によって個性がつくられてきたもの。お酒と食文化は関わり合いながら発展しているので、必然的に相性が良くなるという考え方です。
例えば、ドイツビールならドイツ料理のソーセージ。ペールエールなら、イギリスを代表するファストフード「フィッシュ・アンド・チップス」のペアリングは、日本でもおなじみです。
味わいの相性はもちろんのこと、その国を旅するような気分で、ビールと料理が楽しめることも魅力です。
ペアリングのコツ②:色の相性を考える
2つ目は「色の相性」です。ビールの色は、料理の見た目と同じように、色が淡いものはあっさりしていて、色が濃いものは濃厚です。
ビールの色は、主に麦芽で決まり、色が濃いビールほど、焙煎した麦芽の比率が高くなるため、味わいが濃くロースト感のある料理との相性が良いといわれています。
ペールエールなら、くるみやアーモンドなどのナッツ類、揚げ物やこんがり焼いたグリルチキンなど。見た目の色で合わせるだけでも、自然と味の相性も良くなるという、お手軽なペアリングです。
ペアリングのコツ③:味のバランスを考える
3つ目は「味のバランス」からペアリングを考えること。ビールと料理で、それぞれの味を引き立て、補完し合う方法です。
■異なる味わい・香りの組み合わせ
甘味のあるビールなら、塩気のある料理を合わせることで甘さを際立たせ、苦味のあるビールなら、甘い料理を組み合わせると味が調和されます。苦味のあるアメリカン・ペールエールにスイーツというペアリングもおすすめです。
■同じ味わい・香りの組み合わせ
ビールと料理が相乗効果を生み、お互いの味を引き立てます。麦芽の甘さが感じられるイングリッシュ・ペールエールなら、たれで焼いた料理との相性が良くなります。
■香りを調味料としてプラスする
魚介料理や揚げ物なら、レモンを搾って食べる感覚で、柑橘系の味わいを持つアメリカン・ペールエールを組み合わせましょう。
このペアリングを覚えると、さらにビールの楽しみ方の幅が広がります。
まとめ
ペールエールは、苦味・甘味・コクといったあらゆる要素をバランスよく持っています。そのため、どんなニーズに応えられるビアスタイルです。ホップの苦味を感じたい人も、麦芽のコクを楽しみたい人も、フルーティーな香りが好きな人も。友人とワイワイおしゃべりをするときも、自宅でほっこり晩酌するときも。あらゆる好みやシーンに寄り添う、自分にぴったりの1杯に出会えるはずです。
「ビールの縁側」では、全国のブルワリーから直送のこだわりのクラフトビールを豊富に取り揃えています。好きな時に、好きなブルワリーから、好きな銘柄でお楽しみください!
クラフトビールといっても種類が豊富にあり、ホップの苦味や香りがクセになる「IPA」や、コクの深さが日本人に合う「ペールエール」などさまざまです。
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